NPO法人ぽたらか・ぽたらか日記

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◇これがライオンに見えるか? 2007/12/16(日)

介護犬ラン  うちのゴールデンリトルリバーのランちゃんは、公園にくくりつけられて捨てられていたけれど、前の飼い主さんが死 んだから、捨てられたのだろう。
飼い主さんには可愛がられていたのがよくわかる。
人間が大好きで、初めての人でもまぶれついて喜ぶ。
甘え声以外は決して吠えることをしない。

 1階の奥部屋の超問題人間のむらじーは、そんなランが先日冷たい雨が降っていたので、1階の事務所で放し飼いにして いたのを見て、「こ、これはライオンですか?ライオンですね。」と素っ頓狂な声を上げる。
ストーブの灯油を入れていたKさん、顔も上げずに「いえ、土佐犬です。土佐犬。」むらじー、いよいよ怯えて「ひぇー、 じゃ怖いんですね、怖いんですね。」すると、そばの炊事場で仕事をしていた施設長が、「そ、怖いよ。かみつくよ」と これも、頭を上げずにしらっと言う。
むらじー「ひえーっ!」と驚いて部屋にすっとんで帰る。

 当の本人?のランは自分のことを言われているとはつゆ知らず、楽しそうにKさんやら、私のところを行ったり来たり まとわりついて、甘えている。
なにしろ、40年も精神病院のしかも保護室に入れられていた人だから、ゴールデンリトルリバーをライオンと見間違えて も無理はないか??
でも、土佐犬はよかったな。

 あれから、大声で歌を歌っていると「犬を部屋に放すぞ!」と脅されるんで、今は静かにしている。
楽しい職場だな、ここは。



◇戦い済んで日が暮れて 2007/9/28(金)

 今日こそ、精神病院の門の前に簀巻きにして置いとこうと、何回決心したことか。
近所中から変な目で見られるむらじーは昨日の朝から、一変した。
いつものように、散歩に出かけようとするむらジーを追いかけたら、怯えた目で見上げるので「散歩だったら公園か土手 で温和しく座っててくれりゃいいんだよ。くわえたばこで用もないのにコンビニにいったり、わけのわからないことを人 に話しかけたり、よその家をのぞき込んだりしなければね。」と静かにいってやった。
むらジーはううんと頭を振り、しきりに口を横に引っ張って不器用に笑顔を作ろうとしている。
「ああ、この人は笑顔というものがどうしたら、できるのかしらないんだ。」と気づいたら哀れに思えてきた。
以来、むらジーは騒ぎ立てることもなく、落ち着いてきた。
温和しくさえあれば、簀巻きにして捨てることもない。

 ケアマネージャーが担当のケースワーカーを訪ねてたら、転がるように喜んで出てきたという。
病歴の資料を見せてくれといったら、30年分の30センチくらいの厚みのファイルを出してきたそうだ。
統合失調症なら、薬を調整して社会生活は十分にできる。
しかし、このむらジーは病名がつかないのだ。
だから、精神安定剤くらいしか処方されておらず、耐性が出来てしまって、全く効かない。
足立区全体で手を焼いている大物だそうだ。
だからといって、うちのような民間の支援ホームに連れてきたって困るけど。
18歳からこうやって、精神病院をたらい回しにされて、家庭も社会も知らずに育ったんだろうなあ。
まあ、少し様子を見てみるとする。
私たちはまさに戦い済んで日が暮れて、の心境である。
いや、つかの間の休戦か。



◇ぽたらかの行く道 2007/9/9(日)

 ぽたらかを設立して6年目になろうとしている。
始めのころは新宿駅にいた7,8人とどんな仕事をしよう、どうやって仕事を増やそうかと夢に燃えていたような気がする 。
家賃を工面するつもりで無料低額宿泊所を始めた。
今はそれが主流になって身寄りのない年寄りの介護をするのが、仕事になっている。

でも、世間で他にはない仕事を、ぽたらかならではの仕事をやりたいものだ。
そうしたら、お酒の上での失敗で出て行かざるを得なかった人たちも帰ってくるかもしれない。

S山さん。
アル中で入院していて、みんなとは2,3日遅れてやってきた。
酒を飲まなければよく働くいい人なのだが。1滴体に入ると、後は体内で自家発酵してしまう。
ご飯を食べても水をのんでも酔っぱらっている。
だから、山谷に捨ててきた。

N呂さん。
ロシア人みたいな風貌で名は体を表すっていうか、大飯ぐらいで何をやっても不器用。
自立支援センターを出て、うちへ就職したことにして、就職支度金をだしてもらって、5万円の大金を持ったまま、蒸発。
みんなが「戸田だ!」早速、戸田競輪場で場内アナウンスしてもらった。

「野呂さま、ぽたらかのみなさまが心配をしています。早急にお帰りください。」その後、2,3年経って、再び代々木公 園で出会った。
たばこ代500円をやると、「これで、5万円と500円の借りだね」「自覚あるんだ」。
あの時、ぽたらかにみやげのひとつでも持って帰ろうと、倍にするつもりで競輪にいったら、みなすってしまって、ばつ が悪くて帰れなくなった。
それは本当だったらしい。

じゃ、あの場内アナウンスは聞こえてたの?「うん」「帰ってくれば?」「でも俺がいたんじゃ迷惑かけるばかりだし。 」確かにその通りだったんで答えないでいたら、寂しく大きな肩をすぼめて消えていった。



◇一本釣りされた男 2007/7/26(木)

 行方不明が帰ってきた翌朝、定期的に失踪を繰り返していた有限会社ぽたらかのある社員の宛名で、船橋市の住民課か ら転入受理届が送られてきた。 前住所地に送られるとはなにごと?と問い合わせをしたら、本人確認がとれなかったので、とのこと。
住民票や戸籍を5千円とか1万円で買ってくれる人がいるという話はよくみんなから聞かされていたので、これはあやし いぞと、墨田区役所にいって、会社法人として除票を請求した。
さっそく施設長にその住所にいってもらったら、なんともなんとも陸の孤島ともいうべき、それは辺鄙な場所で、それで も小綺麗なアパートの一室に彼はいた。

 電話で「Hさんいましたから、電話変わります。」「なにどうしてそんなとこいったの?」「たもとで声を掛けられて 連れてこられちゃったんだよね。」「生活保護うけてるの?」「いや生活保護は無理みたい。」「そりゃそうだろ、あん たどこも体悪くないもの。で、働いているの?」「いんにゃ、雇ってくれるとこないんだよね。」
施設長は帰るとき、「もうこれでここへ来る道わかったべ?」と声をかけられたそうだ。 「なに、二度とこんなとこくるか!」といって別れたそうだが、迎えに来てくれってことだろうけど、とあきれていた。

 なにも他県でアウトリーチして連れて行かなくても、各地の福祉事務所には生活保護受給者で溢れかえっている。
第二種社会福祉事業宿泊所として届ければ、次から次へとこれでもかというように送ってくるというのに。
でも確かなことは、そんなことして儲からないから絶対に!



◇渡り鳥が飛んでいく! 2007/7/18(水)

 『渡り鳥』が飛んでいった。
といっても渡り鳥というあだ名の64歳のおっちゃんである。
体が曲がり、足をひきずりながら歩く。
酒を飲むと必ず、「わたり~鳥がよ~。」と歌い出す。
「やっぱ、いいねえ。布団の上で寝れるってのはねえ。」といいながら、昔の仲間に誘われるとついつい橋の下で寝こん で、何日も帰ってこないことがある。

 帰ってくるときは大概見え透いた嘘をいう。
この間は結婚を迫る女がいるというので、吃驚した。
なんでも26歳年下で、「30万円持ってくれば一緒に住んでやる。」といわれたと嬉しそうにしていた。
「たった、30万円でこんなみすぼらしいじいさんの世話をしてくれようなんざ、めったにない奇特な人だから、大事に しな。」と半ばからかい気味にいってやったが、本人はどうも本気にしているようだった。

 どうせ、飲み屋で3000万円とふっかけてやれば、もう言い寄ってこないだろうと、思っての事だろうと思うが、本 人は聞き間違えて30万円で世帯を持てるという。
30万くらいならへたをすると用意できる額だ。
「よく考えると、30万円なんて無いんだよね。俺。」そういう問題じゃない!

 まさかそれを本気にしたわけじゃないだろうが、生活保護からの小遣いが酒に変わるので、貯金をするように勧めた。 それが、本気になってしまった。
といっても、4,5万円だが、そんなはした金に目がくらんで、「ちょっと、休みをくだせえ」といいだした。
「休みって言ったって、ここで働いて給料もらっているわけじゃないんだから。どこいくの?」「サウナにいきます」 「あんた、高血圧でしょう?サウナなんかとんでもない。」「じゃ、散歩いってきます。」といって、足を引きずったま ま、出ていってそれきり、もう10日になる。

 そろそろ、福祉課に連絡して報告しようかと思っていた矢先、突然渡り鳥から電話がかかってきた。
帰りたいけれど歩きすぎて足が棒になっている。
迎えに来てくれとのこと。何処にいると聞いてもわからない。
周りの人に聞いたのだろう。
後から電話をしてきて「富士見台だ」。
「どこの富士見台?練馬か中野か?」これもわからなくてまた翌日電話があり「国立の富士見公園にいる」わたしは警察 に保護してもらうように言葉をそえたが、スタッフは迎えにいった。

 しかし、いない。
交番にいって見つけたら保護してくれるように頼んで帰ってきた。
国立の交番の巡査は夜それらしき人が団地の階段に蹲っているのを見たそうだ。
「帰るところがない」と答えたのでホームレスだろうと思ってそのままにしたそうだ。

 「帰るところがわからない」といえば保護してもらえるものを!!
どうみても痴呆がきているとしかみえない老人なのに!
ええい、苛立たしいことだ。
その後、電話代が無くなったのか、全く連絡がない。



◇無銭飲食のじいさんはなんと三井財閥の御曹司!? 2007/6/24(日)

 ホームレスだからって、みながみな同じような人生を歩んでなんかいない。
むしろ、一万人に一人かと思うような珍しい過去を持っている人が多いかもしれない。
元N航空のインドネシア支店長だったという、江東橋下在住のお方がぽたらかへ入寮してきたときはけっさくだった。

 福祉課で無銭飲食で掴まった人を預かってくれないかと電話があり、迎えにいった。 厚生年金は充分にあり、英語はぺらぺらだし、上記の肩書きは偽りではないらしい。 「ただ、本当かただの誇大妄想かわかりませんが、三井財閥の御曹司だっていってるんですが、少し痴呆があるようで して。」とケースワーカーにいわれた。
「さようでございますか。このおかたがあたくしをお世話してくださるんで、恐れ入ります。ただ、ちょっとお断りをし ておきますが、あたくしは来月ワシントンにいかなくちゃいけません。来月一ヶ月ちょっとおひまいただけますか?よろ しゅうございますか?」とぺらぺらまくしたてる。
こりゃちょっとってもんじゃない。
そうとういってるなと思った。
「はいはい、先生ところで鼻水が出てます。」そのお方の顔をぬぐってやって連れて帰ったものだった。

 毎週日曜日には六本木にあるキリスト教会にいく。
なぜ六本木かというと若い外人女性が多いからだそうだ。
とうに80歳は超えているじいさんだ。
英語はぺらぺらだけど、ただのじいさんだ。
これがまた、躁鬱病でうつの時は大人しくていいけれど、躁状態のけたたましいこと、15分しか寝ない。 夜通し起きてごそごそしているから、みんなたまったもんじゃない。
それだけではなく、自分でも疲れるのか昼間眠いという。
黙って寝ればいいものを「あたくしこれから寝ますから、起こさないでください。よろしゅうございますね。」とみんな に言い回っている。耳の遠い呆けたじいさまにまで。
「だから寝りゃいいじゃないか!」と思わずどなったこともしばしば。

 先月の躁は何日だったから、もう後何日でうつになるかな?とカレンダーを見つつ、みんなで指折り数えたものだった。 その人が突如出ていくと荷物をまとめたときは、さすがにだれも引き留めなかった。 その後、また無銭飲食をして捕まって、アパート暮らしをしていると聞いた。

 出ていって、一ヶ月ほどして裁判所からの封書が彼宛に届いた。
それが財産放棄を促す、親族からのもので、その親族の名をみて私たちは飛び上がって驚いた。
なんとあの三井財閥だったのだ。
あのほら吹き男爵はほらを吹いてなかったのだ。
三井財閥のしかも跡継ぎの長男だったのだ。



◇色んなボケ 2007/6/17(日)

 うちは色んな呆けのタイプがあって、おもしろい。 自分の荷物入れにへそくっている、小銭を夜な夜な勘定しているじいさんがいる。 万札も千円札も区別がつかないので、細かいのを渡そうと思ってもたまたまなかったりして、一万円札を渡すと不満顔だ。 真夜中に「ピンポーン」とチャイムが鳴って、すわ何事かとスタッフが飛び起きると秋田弁で「あずっだ、あずっだ。」 (あたった、あたった)「おい。あず、あず言ってるけどなんだ?」東北出身のスタッフが「手がチャイムにあたったっ てことだろう。」翌日チャイムの位置を変えた。

 進行性核上性麻痺という難病患者がいる。元銀座のキャバレーの総支配人で上品な鬚を生やして、いかにもという感じ だったが、この人が最近呆けだした。
この人の頭の中は金と女しかない。中国女に入れあげて年金担保に借金をして、毎月この女に仕送りをしていた。歩けな いので車椅子を押してATMまでついていったら、また振り込もうとしている。
後ろから、「援助してくれる人がいることが分かればその人は生活保護が止められるんだよ。情けは人のためならずって 知ってる?」といったって、はいはいと振り込んでいる。借金返済のため寮費が払えない。身からでたさびなのにまだ性 懲りもなく、次の借金の手段を考えている困った色呆けじいさんだ。

 困るのは暴れる徘徊じいさんだ。
徘徊が始まっても止めてはいけない。妨害されたことだけ頭にあるから大暴れして手に負えない。 「どこへいく?連れてってあげる」と手を引っ張ってもらう形にして、次第に誘導して帰ってくるのが一番だ。 私がおむつ交換をすると、「わしを裸にしてどうする気だ。このすけべ!」とどなるじいさんがいた。 たとえ、若いすてきな男性であっても、このスティエーションじゃ、どうする気も起こらないって!



◇ヨエッちゃんの入れ墨 2007/5/28(月)

 75歳のヨエッちゃんはおなかにポチがいる。線彫りでどうみても子供のいたずら書きにしかみえない。 犬だろうという人もあるが、私には子供が描く鬼のように見える。いずれにしろ、みんなはそれをポチと名付けた。

 うちにくる人の中にはこのような入れ墨の人も結構多い。 だから、特別養護老人ホームになんか、入れない。むろん、銭湯にもいけない。 しかしみんな、この程度のちゃちな線彫りで、人が怖がるようなものではない。 おそらく、刺青師が入門して、3日目にちょっと、練習させてと頼まれて、ワンカップくらいで腹を貸した程度だろう。 かくいう、私にだって、恥ずかしくてみせられないタトゥが右腕にある。 インド仏教徒が腕に蓮花なんか彫っているのを見て、私だったらダルマチャクラだと思って、ナグプールの改宗記念式典 の会場に路上刺青師がいたんで、「ダルマチャクラを彫ってくれ」と言ったけど、通じない。で、絵に描いて説明をした が、彫ってもらっっても出来上がりがよくみえない。 後で鏡に映して見ると、これが泣けそうになるくらい下手。 後悔先に立たず・・・ 今でも息子に「かあちゃんのイソギンチャク」とからかわれている。

 だからヨエッちゃんのポチのことは笑えない。見当識障害で方角が全然わからなくなる認知症のヨエッちゃん、「おしっ こはすわってしようね」とトイレにヨエッちゃんの似顔絵で張り紙をしていても、自分のことだとは気づかずに腰をまげ たまま、100%外に漏らしてしまう困ったヨエッちゃん、おなかのポチ以上に憎めないヨエッちゃんではありました。



◇人の心はバリアフリー  2007/5/27(日)

 この下町は歩道の真ん中に通せんぼのように電柱が立っているかと思えば、スロープを設置している店舗はまれで、車 道にまで商品を並べている。まさに街をあげてのフルバリアだ。でも、人の心にはバリアがないらしい。

 四ツ木橋下に野宿していた40代の犬連れの男性。ある日うちには珍しく、おばさまたちが外でがやがやしているのでで てみると、なんでも橋の下で寝ているお兄ちゃんがどうも様子が変らしい。一人でぶつぶつ怒っている。それがいやだと いうのではなくて、可愛そうだから相談にのってあげてほしいというのだ。
訪ねていくと、白い犬が吠えてきた。顔をみただけで統合失調症だとわかる。しかし、素直で大人しそうな男である。犬 もすぐに慣れてきた。聞けば、20歳頃に親に精神科に連れて行かれ、その薬が合わなくて逃げ出し、以来ずっと河川敷で 野宿生活をしているという。

 初めは足立区側で誰からも声を掛けられず、次に葛飾区側に移ったが、その時始めて、警察の人がパトロールにきてくれ た。子供たちのいたずらが激しいので、それを避けるため、一ヶ月ほど前に墨田区に移ってきたら、すぐに区の委託を受 けたNPOが来て、自立支援センターに入るように勧められたという。犬とは離れられないというと諦めて帰って行った。 今度はまたすぐに近所のおばさんたちが毎日みたいに食べ物を差し入れしてくれるので、吃驚している、墨田区に移った らみんなが心配をしてくれる、いいところです。──とのこと。

 でも、状態がこれ以上悪化すると、心配してくれるおばさんたちもそのうち、彼を怖れるようなことになってはいけない ので、私は犬同伴で入寮を勧めた。 始めのうちはみんなが犬を可愛がり、家族のように彼に接してくれるので、彼も落ち着いて生活していたが、薬の副作用に耐えきれず、3ヶ月後には失踪してしまった。 近所のおばさんたちも心配して手分けをして探してくれたが、ついには見つからなかった。 犬の鑑札はここになっているので、彼に何かあったら連絡が有るかも知れない。 何もないのは無事な証拠といまだに心配して声を掛けてくれるおばさんたちを慰めている。 彼にここにこんなにあったかい家族がいることをいつか知ってもらいたいものだ。



◇うちの大家さん 2007/5/25(金)

ぽたらか ぽたらかが開設して、6年目 になる。東京の下町の風情が残る、路地裏に一 見、平屋の工場らしき建物の外階段を上がると、日当たりのいいベランダにぽんと濡れ縁のあ る、田舎風木造家屋がのっかっているという感じで、まさに都会の中の異空間。作業場があって、みんなが住まい出来るところを探していた私はこ れだ、ここしかない、と即座に決めてしまっていた。

 下見にいってから、半年間契約金のメドがつかず、それでも挨拶程度には顔を出していたが、その度に大家さん「ああいですよ、わたしゃね、 あんたを気に入ったから、いつまででも待ってますよ。」といってくれていた。年の頃は60半ば。元大工さんでかっぷくがいい。
ホームレスを集めて事業するんですけどっていったって、けろっとして、「そりゃいい、あたしの仕事もてつだってもらおう。」こんな人に恵 まれるって事が何よりの縁だ。
昨日5月の誕生会でいつものように大家さんを呼んだら、またいつものようにお酒を差し入れして、「きょうばっかりはつきあえねんだよ。検査 があるからね。ごめんよ。」もらいものがあるとおすそ分け、浅草の縁日いってきたとおみやげ。親戚以上の付き合いである。
仲間が230円の雑誌を万引きしたと警察に掴まったとき(近所のコンビニではない)「どこの店だ!あたしがいって怒鳴りこんでやる。どう せ飲んで勘定忘れたんだろう。あんないい人が。たった雑誌1冊くらいで、江戸っ子の風上にもおけねえ、店長だ。出るとこ出てやろうよ、平尾 さん。」と私が慌てるくらい、私よりか熱くなっていた。
私は警察沙汰になって申し訳なくてあやまりに行ったのに反対に「あんただけは信じてあげなさいよ。」と励まされてしまった。こんな下町人 情に包まれて、ぽたらかは育っていく。



◇ホームレストライアル雇用 2007/5/10(木)

 NPO法人の事業年度なもんで、確定申告の時期である。なんで、赤字なのに国税・都税合わせて11万円も払うんだ。税金はよこしやが れってんだ!NPOなんてなんのメリットもありゃしない。有限法人も作ってしまってるから、これもまた赤字でも最低7万円の法人事業税が いる。両方合わせて20万近く。これだけあれば、うちではかなりのことができる。
 有限会社を作ったのは住所不定者に住むところを与え、就労教育をし、資格を与え、溜めていた健康保険税を払ってやり、飯を食わせて、そ の上小遣いをやる。自慢じゃないが、儲けてその労働対価から給料を払う普通の会社じゃないんだぞ。役に立つようになるまで教育しなけりゃ ならない、それまで失踪せずいてくれりゃ、いい。そんなてあいじゃないんだから、ほんとに。
なのに、役人のほざくことはなんだ!ホームレストライアル雇用助成金たかだか月5万円の3ヶ月のみの支給に恩着せがましく偉そうに、ホー ムレスであることの証明がいるだと、そんなのどこに首ぶらさげて歩いている奴がいるんだ。だから、中高年併用で過去3回雇用した。 「住み込み年齢不問」とすれば、大概十中八九当事者だ。勝手にアウトリーチすなと福祉課からいわれているんで、この手を使うしかない。 駄目かも知れないけど、相談だけはしてみようと手に残った10円玉で電話をしてきた人もいた。

 何度この「住み込み年齢不問」が自殺をくい止めたか知れない。それなのに昨年の10月から、いつものように求人を申し込みにハローワーク にいったところ、担当がふんぞりかえって「ああ、おたくね、おたくは社会保険に入っていないから、求人できませんよ!」とこともなげにぬ かしやがるのだ。

「ホームレス中高年トライアルでしょ、ずっと年金払ってなくて、いまさらって年齢で、しかもいついなくなるか、やめていくかわからないの に、なんで厚生年金に入れられるんですか?働けなくなっても、うちでは老後の面倒はみますよ」と訴えても顔をうごかそうともせず、「規則 ですから、」の一本槍。私はついに切れて、足をばんと組み直していってやった。「それじゃ、聞きますが、そんなリスクを背負ってまであえ てホームレスを雇おうという奇特な事業所がどれだけありましたか?」そいつは「そりゃ、ありませんけれど。」そんなこた、しったこっちゃ ないって、憮然とほざいた。
おまえはどっちに目が向いてる、社会保険庁か。ハローワークはみな民間にしろ。少なくとも、ホームレスを目の前にして、厚生労働白書など を全職員で回し読みして、結局ホームレスの定義なるものを文章の中に見いださないと何も先へ進まないようなことはないはずだから。
ちなみに、ホームレスとは公園や河川沿いに起居したるものと書いてあったばかりに、連れて行ったものがテントは持たずに駅の構内等で野宿 していたので、ホームレスとは認められないのだそうだ。へっ!



◇酒をやめられるのは愛の力? 2007/4/30(月)

 酒飲みというものの性分は、なかなか治らないものだ。気の弱いものが酒に飲まれてしまうものらしい。私も決して嫌いではないほうなので、 特に暑いさなかに重労働をしていて、これが終わったら冷たいビールだと思うと力も入るが、これが終わったら大福に温かいお茶で一杯を楽し みになんて、まあ好き好きもあるだろうが、私なぞは力が出ない。
だからぽたらかでは、月に一度は飲む会をもうけて存分に飲ませるが、普段隠れて飲むのは御法度だ。まあ一杯くらいと思ってもアル中くらい になると、一杯飲んだだけでも後はごはんを食べても何を食べても体の中で自家発酵するらしい。だから、一杯でも飲ませてはいけないのであ る。
 酒がないと眠れないという、過酷な生活もあるだろう。顔を真っ赤にして酒くさい臭いを吐きながら、それでも「飲んだだろう?」と問いつ めると、絶対に飲んだとは認めない。反射的にうそをつく。それも荒唐無稽なうそを。

それ以外はなんの規約もない。せいぜい、ご飯前に帰れなかったら、連絡をしなさい。『同じ家に住んでいたら、心配をするものだからね。』 というのだが、そういった当たり前のことが出来ない人が多い。分からせるには何度も本気で心配してみせるに限る。

 迷子になっても失踪しても見つかったときは叱るんじゃなくて、体を心配してみせること。それがわかってくれるのはなんども裏切られてか ら。酒も飲まなくてもいい人間関係を作ってやること。これが超難しいことではある。
酒を飲んで失踪したKさん。その後住所を設定していたら、30年ぶりに家族が尋ねてきた。探してくれたらお礼をというんで、探した探した。 ついには霊感占いをたよりにまことに不思議なことがあって、見つかったのだ。この人が心配してくれる家族がいたということでぴたっと失踪 ぐせは治ったのだ。



◇ホームレスのお袋として 2005/9/21(水)

 統合失調症の木村くん(40歳)、四ツ木橋のたもとに10歳の白い雑種犬と野宿していたのを近所のおばさんたちが世話を焼いて、私達に 話があり、犬付きで引き取ることになって、3ヶ月がこようとした9月8日、突如行方不明になった。
 11年間荒川河川敷に犬のチーコと一緒に暮らしていた。 夏休みが始まる頃、子供達のいたずらが悪質化する前にと入寮させた。 彼は調子のいいときはいいが、悪くなると極めて不穏になる。 元気なときが彼にとっての基準で薬の副作用によって、元気はなくなったが、少なくとも幻覚幻聴はなくなったことが頭にない。 私達のところにいると薬を飲まされる。 犬が来訪者に吠えて迷惑がかかる。彼なりに考えた末のことだろうが、今は他人だけれども心から心配してくれる家族がいる。 そのことに気がついていない。 10人の寮生はみんなで手分けをして、今も必死で探している。近所の人たちも心配をしている。 ここぽたらか寮は身寄りのない元路上生活者が身を寄せ合うところ、木村くんはもうぽたらかの家族なんだよ。 そして、お袋はここにいるよ。。。



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ぽたらかとは古代インドの言葉で現実の理想国土という意味です
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